長い歴史の歳月が過ぎるなか、台湾では紀元前人類、原住民、オランダ人、スペイン人、日本人、漢民族が暮らしていたため、豊かな文化が創り出されました。それぞれの地方で独特の人情や歴史文化が育まれ、今もなお生活の中に息づいているのです。台湾では文化古跡の美をじっくりと堪能できることを請け合います。
歴史的にも地理的にも特殊な環境に置かれた台湾では、原住民文化、オランダ文化、スペイン文化、日本文化に加え、漢民族からもたらされた中華文化が交錯し、多種多様かつ豊かな文化が育まれてきました。漢民族により独自の文化が造り出され、近年ではアメリカ文化も大量に流入しています。そのため、台湾の文化は、それぞれの文化が交錯するという特性を持つ一方で、多民族から形成される活発な文化形態を呈し、異文化による対立、妥協、再生という過程を繰り返しながら変化してきました。そのような背景の下、原住民によって残された伝統建築様式や人文史蹟、民俗芸術などの文化遺産は、至るところで目にすることができるのです。
台湾の歴史は、二千年前、五千年前、何万年前にまで遡ります。考古学者の推量によれば、一番最初にこの地で暮らしていた住民は、紀元前の人類らしく、台東の岩穴からは、紀元前の人類が生活を営んでいたという遺跡が発見されています。
原住民とは古来より台湾に定住している群衆のことを指します。南洋文化圏の最北端に位置する台湾の原住民は、大きく分けて高山民族と平埔族に分類されます。高山原住民はツォウ族(嘉義、高雄、南投)、サイシャット族(新竹、苗栗)、アミ族(花東縦谷・海岸)、タイヤル族(中北部、東北部の山地)、パイワン族(屏東、台東)、ブヌン族(台東、花蓮、高雄、南投)、プユマ族(台東県境)、ルカイ族(屏東、台東、高雄)、タオ(ヤミ)族(蘭嶼)、サオ族(日月潭)、タロコ族、クバラン族、サキザヤ族、セデック族、サアロア族、カナカナブ族の16つの部族に分けられます。漢民族化により、台湾の原住民の生活は、次第に、漢人と似たり寄ったりの生活になってしまいました。しかし、それぞれの部族で自分たちの伝統文化や集落の建築様式を受け継ぎ、お祭りなどを通して再現されています。また、これらのにぎやかなお祭りからは、南国ならではの文化を肌で感じることができることでしょう。
淡水の紅毛城(ドミンゴ城)、台南安平の古城(赤崁楼、ゼーランジャ城)や総統府、立法院、監察院、学校建築、各地の自治体省庁、集会場などでは、オランダ人、スペイン人、日本人が台湾を統治していた時代の名残りが今でも残っています。これらは外来文化がもたらした歴史を検証する物件でもあるといえましょう。
しかし、台湾の主な歴史文化は、漢人が中国からもたらした文化と台湾で作り出された2つの文化の共存と言えましょう。閩南人、外省人、客家人の各民族は、それぞれ独自の文化遺産を育んできました。また現在も至るところで原住民が残した生活の足跡や知恵の結晶を目にすることができます。台北、台南、鹿港などの街角では今もなお、古城や廟、昔ながらの下町の様子が残っています。離島の金門、馬祖、澎湖へ足を運べば、戦跡や昔ながらの集落形態、文化史蹟を歴訪する旅が楽しめます。
古跡歴訪の旅もいいですが、三義の木彫り製品、鴬歌の陶器、金門の陶芸工房など、台湾ならではの芸術品を観賞する旅も格別です。また、台湾人は無類の「行事」好きで、春節(旧正月)、廟の新築、中秋節、清明節、普渡(中元節)など、台湾文化には欠かせないシーンです。これらの行事を通してこそ、文化が育まれた時代の背景や歴史的な意味を感じることができるのではないでしょうか。
タイムトンネルに入り、時を越えた歴史文化を訪ねる旅に出てみてはいかがでしょうか。文化の宝庫、台湾が、あなたを虜にするに違いありません。
台湾で楽しむ建築散策
総統府台湾には数多くの歴史建築が残っています。多くは古跡に指定され、保存対象になっています。内部の見学ができるところや、日本語のボランティアガイドが常駐しているところもあります。
今もなお現役の官庁舎といえば、総統府(旧台湾総督府)や台中市政府(旧台中州庁)、基隆市政府(旧基隆市役所)などがあります。これらは今も昔も変わることなく、行政庁舎として機能しています。
また、台南の国家台湾文学館(旧台南州庁)や高雄の歴史博物館(旧高雄市役所)、北投温泉博物館(旧台北州立公共浴場)などのように博物館になっている場所もあります。いずれも建物の持つ雰囲気を大切にしながら補修工事が行なわれています。
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西門紅楼
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金瓜石の黄金博物館の太子賓館
さらに、台北市内の市長官邸文藝沙龍(旧台北州知事官邸)や紫藤廬などのように、特有な歴史的建築が、のんびりくつろげる優雅なカフェや茶芸館として生まれ変わっているところもあります。
様々なスタイルの建造物を訪ねる
建物様式もバリエーションに富んでいます。建築散策の定番と言える赤煉瓦建築から日本式の木造家屋、耐震構造を施した現代建築、また、戦時期だけに見られた帝冠様式なども見ることができます。
赤煉瓦建築としては、台北市内では総統府や西門紅楼(旧西門市場)、監察院(旧台北州庁)などがあります。いずれもルネサンス様式の美しい建物です。赤煉瓦の壁面に石材を用いて造られた白帯が独特です。
また、木造家屋としては、台北市内の市長官邸藝文サロンや宜蘭市にある宜蘭設置紀念館などがあります。そのほか、花蓮県の瑞穂温泉や紅葉温泉、安通温泉などでは日本統治時代からの温泉旅館が残っています。
帝冠様式の建物は建築好きなら外せないスポットになっています。現在は高雄願景館と呼ばれている高雄旧駅舎や高雄市立歴史博物館(旧高雄市役所)などがあります。帝冠様式とは近代的な建築母体の上に東洋式の屋根を載せたもので、日本特有のスタイルです。1930年代から終戦までの間に建てられたものです。
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北投温泉博物館
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監察院
気軽に楽しめる建築散策
北投文物館こういった歴史建築は市街地に集まっていることが多いので、日程が限られていてもコンパクトに楽しめるのが嬉しいですね。地図を片手にそぞろ歩きを楽しんでみてください。書店などをのぞけば、建築物をテーマにしたガイドブックや写真集なども出ていますので、こういったものを参考にしてみるのもいいでしょう。
歴史建築巡りがしやすいのは台北市をはじめ、新竹市や台南市でしょう。物件数も多くて散策向きです。古跡に指定されている歴史建築には解説版が整備されており、日本語のパンフレットを用意しているところも少なくありません。中には日本語が話せるボランティアガイドのいるところもあります。日本と台湾の歴史的繋がりを感じながら、散策を楽しんでみてください。
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